激しくも繊細に全身でリズムをとりながら、イヤホンからの音楽に陶酔している彼に切り出すのは、つらい仕事だった。 「沼男、すごく言いにくいんだけどリュックの底からお茶ふうのものが流れ出てる。いま流れ終わるとこ」 彼は「おお亜季」と言いながらあわ…
個性提供者第一号として、私はふだん利用しない系統のバスを乗り継いでその街に着いた。待ち合わせ場所は小学校の前だ。土曜日なので校門はとざされている。門扉は塗り替えたばかりらしくきつい水色だった。風が吹くたび黄土色の落ち葉が、乾燥した波のよう…
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