「WB」vol.23ウェブ公開

早稲田文学4号刊行記念として、通常より早く「WB」vol.23(2011年6月発行)をウェブ公開します。
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from editor(WBvo.23)

 今号は「東日本震災に。」として小特集を組みました。
 巻頭の小説は、古川日出男さん「プーラが戻る」。小誌チャリティ・コンテンツとして、震災の数日後に書かれた短篇です。
 「僕」がある女性からその存在を聞いた怪獣・プーラは、秋のあいだだけ学校のプールに棲むという。プーラとは何ものなのか。そしてどこへ行ったのか。短いながらも、大きな世界が広がっていくのを感じる作品です。
 つづいては、阿部和重川上未映子斎藤環、辛島デイヴィッド、市川真人の各氏による座談会「震災と「フィクション」(言葉・日常・物語…)との「距離」」。
 震災から3か月、小説家・批評家たちはどのように受け止め、何を考えたのか。マスメディアでネットで、あるいは個々人のあいだで行き来する言葉と、書き手それぞれの言葉と小説について、そしてこれからについて率直かつ真摯に語る。4段組7頁にわたるロング座談です。
 池田雄一さんによる連載〈俺の人生に時給くれ!〉が特別篇として帰って来ました。セックス・ピストルズに象徴されるパンク・ロックに見出した「もうやってらんねえぜ!」という思想。それを3.11以降の現在へと大胆に接続します。


 そしていつもの連載。
 毎号執筆者の変わる〈日直から。〉では、環境ビジネスライターの藤井久子さんによる「再生可能エネルギーによる脱原発は可能か」。タイトル通り、岩手県葛巻町など再生可能エネルギーを大幅に導入した場所を取材する藤井さんからの提言です。
 大澤真幸さん〈〈社会〉の思想〉も「ウラン爺」と呼ばれた東善作について。50年代、60年代には幸福への鍵として信じられていた原子力の二重性を論じます。
 江南亜美子〈つぎ、どこ行くの?〉、今回の舞台は神戸です。村上春樹谷崎潤一郎、西東三鬼を読みながら、戦争と震災をくぐり抜け何度でも生まれなおす神戸の街を訪れます。
 「1/6909 世界の言語を訪ね歩く」は翻訳家の泉京鹿さんに、中国の作家たちが好んで使う、あるフレーズを紹介してもらいました。70年代生まれの衛慧、アニー・ベイビーから、80年代生まれの郭敬明、田原まで、世代を超えて通底する「生活在別処」とは? 先日、刊行されたばかりの郭敬明『悲しみは逆流して河になる』とともにぜひご覧ください!
 もちろん他の連載も好評掲載中!
 迫川尚子さんによるおじいさんと猫の写真、今日マチ子さんによるカラフルかつ落書きだらけの手帳のイラストが目印です。
 この機会にぜひお手にとってください!


目次
古川日出男 【小説】プーラが戻る
阿部和重川上未映子斎藤環+辛島デイヴィッド+市川真人 【座談会】震災と「フィクション」(言葉・日常・物語…)との「距離」
池田雄一 俺の人生に時給くれ! 特別篇【もうやってらんねえぜ! という思想 もしくは裏声でうたえMy Generation】
現代作家が選ぶ世界の名作リターンズ 特別篇 「十六夜泉鏡花
斎藤美奈子 旧作異聞 ご当地文学篇(24) 【志賀直哉『城の崎にて』】
カーリル×WB ウチのオススメ(レシピ版)〈図書〉
泉京鹿 1/6909 世界の言語を訪ね歩く 第2回【中国の作家たちが描く“生は彼方に”】〈外語〉
米光一成+ナカシマカズユキ Final Dragon Library World 6【ぼくは勇者に向いてない『世界は密室でできている。』編】〈冒険〉
望月旬々 げきからぶんがくにゅうもん 第06回【『円卓』の琴子ちゃん】〈給食〉
円城塔 数学への長い道 第3回【√2】〈算数〉
江南亜美子 つぎ、どこ行くの? 第2回【何度でも生まれなおす場所、神戸へ】〈地歴〉
大澤真幸 〈社会〉の思考 第3回【ウラン爺の滑稽な最期】〈現社〉
玉川重機 【マンガ】草子ブックガイド 早稲田文学編(3)白洲正子『花にもの思う春 白洲正子新古今集』〈国語〉
藤井久子 日直から。第2回【再生可能エネルギーによる脱原発は可能か――エネルギー資源を見直す】〈HRホームルーム〉
迫川尚子 【photo】p01作品
今日マチ子 【Illustration】p20作品

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